ホームレスで食いつないでいた二十二歳の女が三十日、自暴自棄になった末に起こしたコンビニ強盗事件で有罪判決を受けた。身寄りも収入もなく、切羽詰まっての犯行。肉親に見捨てられ、各地を転々とした末に訪れたのは「日本一元気な街」だったのだが-。
判決を受けたのは山口県出身、鈴川貴美子被告(22)。八月二十日夜、名古屋市中村区のコンビニに押し入り、女性店員をはさみで脅して五万四千円を奪った強盗罪で、名古屋地裁に懲役三年、執行猶予五年(求刑懲役五年)を言い渡された。
「親に頼るつもりはありません」。十六日の初公判。被告はきっぱりと言い切った。
その理由は、法廷で次第に明らかになっていった。
冒頭陳述などによると、被告は大阪府内の比較的裕福な家庭で育った。しかし、高校を卒業するころに両親が離婚。父母はそれぞれ新たな家庭を持った。居場所がなくなった被告の“転落”が始まった。
福岡市の母親にひきとられたが、新しい家族生活を望む母親に見放され、家を出て路上生活を始めた。ホームレスが約二年間に及んだ時、台風の被害に遭ってこれ以上続けることを断念。今春、やむなく母を頼ったものの、母には拒否され、横浜市の祖母を訪ねた。
その祖母にも受け入れてもらえず、福岡まで戻る金がなくて名古屋駅で降りた。
手持ちの六千円はすぐに底をつき、同駅西側付近で再びホームレス生活に。軒先で寝ているところを警察に通報された。大阪から来た父親は二万円だけ置いて帰った。
「マンスリーマンションで猫と暮らすため、まとまった金が欲しかった」と供述した被告。
野良猫に、肉親に見捨てられた自分の姿を重ね合わせていたのかもしれない。裁判官に「親を頼らないなら自立して働かないといけない」と諭され、小さくうなずいた。
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007103102060607.html